歌が上手くなりたいという方の多くは、ビブラートができるようになりたいと思っています。
ここではビブラートについての考え方をお話しします。

ボイトレを続けることでいつの間にかできているビブラート

多くの人はビブラートは練習してできる、練習すればできると思っているかも知れませんが、 ビブラートは実はいつの間にか勝手にできるようになるのです。
逆に言えば、ビブラートが出来るようになる練習など必要ないという事です。
もちろんそれ自体の練習方法はあるのですが、 多くの場合はビブラートを練習する前に、もっと大切な事が山積みだと言えます。

ビブラートのイメージ ビブラートは「腹式呼吸で安定した発声」ができるようになれば、自然とできるようになっています。
つまり、安定した発声さえできれば、多くの人は勝手に自然でキレイなビブラートができるようになるのです。
安定した発声ができないまま、なんとかビブラートをしようと練習すると、 不安定で無理やりやっている感じのビブラートになってしまいます。
もちろんそういうやり方でも極めれば良いのかもしれませんが、 それよりも安定した発声ができるボイトレをする方が、全体を見れば有意義です。
プロアマ問わず、もしあなたが今キレイなビブラートができていないのであれば、 それは「安定した発声ができていない」事と「歌い足りない」と言えます。

安定していないビブラート 随分前の話ですが、私に発声について教えて下さった俳優の方は、毎日2時間は発声練習をしているそうです。
私は毎日練習していましたが、それでも長くて1時間なのでまだまだなのだと実感しました。
それ以来は主に発声練習に重点を置き、色々なパターンを数多く、そして長い時間練習するようにしました。
不安定なビブラートしかできなかった私は、これまでの積み重ねもあったのか、程なくしてキレイなビブラートがいつの間にかできるようになっていました。
先にも述べたように、「上手くビブラートをしよう」と思ったところでなかなか上手くできません。
それよりも、もっともっと発声練習をして、もっともっと歌を歌う事がキレイなビブラートができるようになる為の近道です。

ビブラートの考え方

多くの人はビブラートが出来るようになりたいと思っていますが、 私はそれほど大切な事だとは思いません。
他の色々な大切な事や、テクニックなどのひとつに過ぎないからです。
もちろんビブラートができると「上手い」と多くの人は思うのですが、 一般的に審査やオーディションなどでの評価の対象としてはあまりいいイメージが持たれません。
例えば、曲中のほとんどでビブラートをかけまくっているような場合、 「上手いでしょ?私の歌を聴きなさい!」というような悪いイメージとなってしまい、 しかもそれで他の大切な事が全然出来ていないと、 「この人は上手く歌っているのを見てもらいたいだけだな」と思われ、結果は悪くなります。
「上手く歌おうと思わなくていい」と言われるのはこういうこともあるからです。
もし仮に採用するとしたら、 個性や他の大切な色々な事が出来ている人を優先します。
それらは習得するのが難しかったり、時間がかかるからです。
逆にビブラートが出来ていなくても、プロダクション側でレッスンを続ければ比較的短期間でできるようになるので重要性は低くなります。
(そもそもビブラートができる必要が無い場合の方が多い)

曲によってはビブラートをかけない方が良い場合もありますし、 必要なところで自然とビブラートがかかるというのが最も良い結果となります。


ビブラートのコツと練習

ビブラートをする上で重要なコツのひとつは喉がリラックスしていることです。
基本的には喉と息のバランスでビブラートをしています。
この事からも腹式呼吸や発声が重要であることが分かります。
慣れると喉に負担のかかる高音域などでもキレイなビブラートができるようになりますが、 もっともやりやすいのは自分にとって楽な音程です。
特に発声がまだできていない=音域が狭い時に、 一般的なミュージシャンの方の曲で、その音域を出すのに無理があると、 その曲でビブラートができるようになるには相当時間がかかります。
極端にキーが高い場合などでは永久にできなかったとしても無理もありません。

もうひとつの重要なコツは息の量です。
全く同じ理由で、しっかりした発声ができていないとビブラートはできません。
揺らすほどの息の量があって初めてビブラートができるようになります。
しかしこれも慣れると、わずかな息でビブラートができるようにもなります。
あくまで息の量なので、声の大きさは関係ありません。
つまり、声が小さくても息が多ければビブラートができます。
簡単に言えば息ばかりが出ているかすれた声でもできるということです。
ただそれが良いといっているわけではなく、 声を乗せる量ではなく、息の量が大切だと言うことです。

ここまでを踏まえて効果的な練習方法は、 ピアノなどの音に合わせるのではなく、 自分にとって自然と出る音程で、力強く息を吐きながら発声することです。
「アー」と発声を続けるという簡単なやり方です。
ここで言う力強くと言うのはあくまでお腹や息の話で、 喉は常にリラックスできている方がうまくできます。
ビブラートをしようと全く思わない方がいいです。
自然と力強い発声ができれば、練習を続けることでできるようになります。
いつの日か「突如として勝手に」できるようになります。
初めて自然と出来た時は、「今、できた!?」と思うことでしょう。
その時はその感覚を忘れないように繰り返し何回も続けて下さい。
そして必ず次の日も練習をして、ビブラートができていることを確認して下さい。

言ってしまうと、ビブラートは仕組みもコツも簡単なことなのですが、 それに必要な息の量とバランスは経験で、 なおかつ十分な発声ができて初めて体験することができます。
キレイなビブラートをするためのもっとも近道は、 十分な発声ができるようになる事という事を、ここまで読まれた方は理解できたと思います。


ビブラートの蛇足

ビブラートとして見かけるものは以下があります。

・ 息(お腹)のビブラート
・ 喉のビブラート
・ 口のビブラート

本来の歌のビブラートとしては息(お腹)でするもので、これ以外は認めないという方もいるようです。
喉のビブラートはショートビブラートを含む、息に関係なく喉でするものです。
口のビブラートは口を開けたり閉めたりをわずかに繰り返し、ごく微量のビブラート効果を得るものです。

この中でもっともビブラートができていると思い込んでしまうのが喉のビブラートです。
これは鼻歌程度の音量でもできてしまうので、 息の量に関係なくできてしまう場合は喉のビブラートといっても間違いはないでしょう。
かといってそれが悪いと言っているわけではありません。
特にショートビブラートは私はテクニックのひとつと言っても良いと思っています。
ただ、コンテストなどで稀に「プロでもここまでキレイなビブラートができる人は少ない」と言われるほどの自然なビブラートができる方は、 やはり息(お腹)でするビブラートばかりです。